「がんに効く生活」とか

1972年9月生まれ。男性。2013年まで精神科医をしていました。リンクは自由です(連絡不要)。

精神疾患の予防にも魚油が効く

コレステロール値が高いほうがずっと長生きできる」(浜崎智仁著)p120-122

このように、魚油のEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)と心血管疾患の関係が明らかになってきた。さらに最近では、魚油に関する研究でいちばん熱い部分が、心臓から脳に移ってきた感がある。

魚油に関しての神経系分野での研究を紹介しよう。魚油についてはこれまで、EPAが「うつ病の治療に有効」という研究があるし、われわれの研究で、魚油が「攻撃性を制御する」ことがわかっている。

加えて、最近とてつもない論文が発表された。「精神疾患の予防」に魚油が有効だというのだ。これは、証明力の強い介入試験で確かめられた。

被験者は13~25歳の81人で、皆が精神疾患の症状を呈していたり、一時的な精神疾患を経験したり、あるいは精神疾患に罹患しやすい状況や特性を持つ。いずれも、かなりの危険因子を持っている人たちばかりである。まず、12週間にわたり、魚油(DHA+EPAで1.2g)あるいはプラセボ(偽薬)を二重盲検法で投与し、投与が終わってからさらに40週間観察して、精神疾患を発症するかどうかを観察した。

すると、魚油群には41人の被験者がいたが、1年間で発症したのはたった2人のみであった。一方、プラセボを使った対照群では、40人の被験者中11人が精神疾患を発症し、両群の間に強い有意差が認められた。

また、統合失調症で良く使われるPANSSと呼ばれるスコアでは、陰性症状、陽性症状および全般のスコアも、魚油群で改善されていることが判明した。

この論文のすごいところは、これまでの研究が統合失調症などの発症の危険性が高い人たちに対して、必ずしもその予防に成功していなかったのに、それに成功している点だ。もしも薬を使えば、まず確実に何らかの副作用にさらされる。ところが、魚油の副作用は極めて限られており、魚油なら子供でも問題ない。妊婦でも問題がない。

もう一つ面白い点がある。なぜ、最初の12週間の投与だけで、その後40週間も効果が持続したかである。

魚油の効果は、一般にかなり長持ちすることがわかっている(これは欧米人の場合で、日本人でどうなるかは未だ不明)。魚油の投与終了から数ヶ月たっても、白血球からのサイトカイン産生が抑制されることが知られている。サイトカインと精神との関係はよく知られているので、精神・心理系への効果が長続きしてもおかしくはない(「サイトカイン」とは、免疫や炎症にかかわる細胞が情報の交換や指示を出すときに利用する分子群)。

試験の対照群では、その大部分が最初の3ケ月で発症している。一方、魚油群では1ヶ月目と7ヶ月目に一例ずつ発症している。このことから、魚油による予防はかなり早期から効果を発揮することがわかる。

(引用はここまで)

 

二重盲検法

医者は、自分が処方しているものが、薬かプラセボ(偽薬)か分からない。

患者も、自分が飲んでいるものが、薬なのかプラセボなのか分からない。

そういう状態で試験(追跡調査)を行ったということ。

 

私の感想。

母はお魚が大好きだった(香川県の海沿いの町で育つ)。母はとても穏やかな人だった。